英国の医学雑誌に、 日本の受動喫煙対策の遅れに警鐘を鳴らす論文が掲載

世界的に権威のある医学雑誌である英国医師会雑誌(BMJ)のオピニオン欄に、日本の受動喫煙対策の遅れに警鐘を鳴らす論説が掲載されました。渋谷健司先生(東京大学)、橋本謙氏(国際協力機構・ハイチ保健専門家)、田渕貴大先生(大阪国際がんセンターがん対策センター)と共に書いた文章です。できるだけ多くの方に読んで頂きたいので、日本語訳をこちらに掲載させて頂きます。

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世界保健機関WHOによると、公共の場における禁煙の法制化により、55カ国15億人の健康が守られているとされている。現在168カ国がWHOの「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」に参加する中、残念ながら日本の喫煙規制のレベルは最低ランクに位置付けられている。

日本は、国民の8割以上が非喫煙者にも関わらず、飲食店、酒場、職場などを含む多くの公共の場での喫煙が許されている国である。最近、公共の場での禁煙が最近話題となった背景の一つに、2020年に東京で開催されるオリンピックがある。国際オリンピック委員会IOCは、WHOとともにオリッピック開催国において、受動喫煙対策の強化に努めてきた。2016年10月に塩崎恭久厚生労働大臣(当時)が、公共の建物の中での喫煙を禁ずる法案を提出したものの、たばこ推進派議員から強い反発を受け、2017年6月に終わった国会で法案を通すことができなかった。このままでは受動喫煙対策は2020年までに間に合わない可能性がある。

受動喫煙防止法案がたばこ関連の疾病の予防につながるというエビデンスは、複数の医学研究によって示されている。また、受動喫煙防止法案の導入は、外食・接客業界に長期的に経済的な影響を与えないとも複数の研究結果が示唆している。

しかしながら、日本におけるたばこ・外食・娯楽産業の圧力は強い。財務省が売上額世界第3位を誇るたばこ会社であるJTの33%の株を保持しているという事実も、たばこ関連産業による受動喫煙防止法案に対するロビイングを容易にしている可能性がある。たばこ推進派議員の大半は、自民党たばこ議員連盟に加盟し、受動喫煙防止法案の内容に関して、禁煙標識の表示、分煙、経営者による判断に任せるように働きかけてきた。

厚労省の受動喫煙防止法案は、当初、全ての公共の場を対象としていた。それに対して、自民党案は対象を100m2以下に緩めたものであり、これによると日本全国のバーや居酒屋の5%、飲食店の14%のみしか対象にならないと推定されている。

日本国民(特に子どもや妊婦)は受動喫煙の健康被害をこれからも受け続けることになるのだろうか?国民の大多数を占める非喫煙者の声が、少数の喫煙者の声に負けているのが現状である。日本の国会ではしばしば党議拘束が強いられ、議員個人が党の決断に反対して票を投じるのは困難となっている。もし今回の件に関して、党議拘束を外すことができれば、国会議員は、日本国民の健康にとって合理的かつ倫理的な決議を行うことが可能となるかもしれない。

一つだけ明るい知らせがあるとすれば、東京都議会が受動喫煙防止の条例の可決に向けて前進しているということかもしれない。これ導入されれば、多くの国民の健康が守られるだけでなく、国の議論にも大きな影響を及ぼす可能性がある。

日本の政治家は今、重大な岐路に立たされている。厳格な受動喫煙防止法策により、国民の健康を推進し、健康的な国を目指すのか。それとも、規制を弱めた妥協案を導入することにより、受動喫煙の被害者を代償に、既得権益層を優遇し続ける道を選ぶのか。最終的な決断は、安倍総理大臣や加藤厚生労働大臣のリーダーシップによって決まるのかもしれない。

毎日新聞(2017年11月10日)に記事が掲載されました(オンライン版へのリンク)。

 

Mainichi_BMJ_smoking

原文:Tsugawa Y, Hashimoto K, Tabuchi T, Shibuya K. BMJ. 2017. Is Japan losing the fight against smoke-free legislation?

http://blogs.bmj.com/bmj/2017/10/24/is-japan-on-the-verge-of-losing-the-fight-against-smoke-free-legislation/

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