レセプト+健診データを用いた機械学習モデルによって、高額医療費が来年必要となる患者の予測が可能に

このたび、健康診断のデータとおよび医療機関受診データ(株式会社ミナケア提供)を用いた機械学習予測モデルを構築することで、将来医療費が高額になる集団を正確に予測することが可能かどうか検証した研究結果が、ネイチャー・グループの国際雑誌であるnpj Digital Medicine誌に掲載されました。大沢樹輝(東京大学医学部附属病院)、後藤匡啓(TXP Medical株式会社)、山本雄士(株式会社ミナケア)、津川友介(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)による共同研究です。

令和元年度の日本の年間医療費は43.6兆円となり過去最高を更新しました。増大する医療費の抑制は喫緊の課題ですが、これは日本だけなく先進国共通の問題でもあります。医療費抑制に成功している先進国はほとんどなく、現在も多くの研究がなされています。

過去の研究では、全体の医療費のうち50%が年間医療費の上位5%の患者によって利用されていることが指摘されており、効率的な医療費抑制を図る上では特に将来的な高額医療費使用が見込まれるような患者に対して、予防的な医療介入が必要なことが示唆されています。ただ高額医療費患者のうち半数に関しては前年の医療費はそこまで高くなく、予期せぬ病気や怪我に基づく急激な医療費の増大が高額医療費の原因とされることが知られており、実際に予防的な医療介入を行うとしても、将来的に高額医療費が必要となるリスクが高い人を正確に予測することは簡単ではありませんでした。

1日本の大規模健康保険組合加入者における年間医療費の分布 (2016年)

上位1%, 5%, 10%の患者が、それぞれ全体の26.4%, 47.7%, 60.0%の医療費を使用していました

そこで、私たちは2013~2016年の株式会社ミナケアのデータを用いて、大規模健康保険組合に加入している18歳以上の被保険者の定期健康診断および医療機関受診データから、将来的に高医療費が必要となるリスクが高い人を同定する機械学習予測モデルを構築し、その精度についての検証を行いました。機械学習は人工知能の一種であり、多くのデータを学習させることで従来の予測モデル(ロジスティック回帰モデルなど)と比較して、より正確な予測を行うことに長けることが知られています。本研究ではランダムフォレストやニューラルネットワークなどといった代表的な機械学習モデルを使用しました。

今回私たちは、過去の研究で用いられていた医療機関受診データに加え、それらに含まれないような血圧値や血液検査、アンケート(喫煙歴や既往歴など)のデータを定期健康診断の結果から抽出し、モデルに組み込み学習させることで、予期せぬ病気で将来的に高額医療費が必要となるリスクが高い人を正確に同定することを試みました。

その結果、私たちの機械学習モデルを用いることで将来上位5%の高額医療費患者となるリスクを、高い精度で予測すること(AUC値: 0.84)が可能であることが示されました。また定期健康診断および医療機関受診データ両方を予測モデル構築に用いることで、医療機関受診データのみを用いる場合と比べて、予測能が高くなることもわかりました。

2 高額医療費患者の予測モデルの予測能(A: ROC curves, B: Decision curve analysis)

予測モデルを構築にするにあたり、従来の予測モデル(ロジスティック回帰モデル)と比較して、機械学習モデルがより有用であることが示されました。

これらの結果から定期健康診断のデータを医療機関受診データに加えて用いることで、被保険者の健康状態をより正確に推定できる可能性が示唆されました。

本研究によって開発されたリアルワールドデータを用いた機械学習予測モデルによって、将来高額医療費になるリスクの高い人達を事前に同定することができると考えられます。その人達に早期介入し、必要な医療サービスや予防医療サービスを提供することで、高額医療費患者になる確率を下げることができる可能性があります(これが本当に実現可能かどうかは更なる研究が必要です)。今回私達が開発した機械学習予測モデルは、このような形で医療費削減に向けての政策提言や健康経営プログラムの制度設計に有用であると考えられます。

<論文タイトルと著者>

タイトル:Machine-learning-based prediction models for high-need high-cost patients using nationwide clinical and claims data

(レセプトデータと健診データを用いた高医療費患者の機械学習予測モデル)

著  者:Itsuki Osawa, Tadahiro Goto, Yuji Yamamoto, Yusuke Tsugawa

掲 載 誌: npj Digital Medicine (https://www.nature.com/articles/s41746-020-00354-8)

<お問い合わせ先>

氏名(ふりがな):大沢 樹輝(おおさわ いつき)

所属: 東京大学医学部附属病院

E-mail: ioosawa-tky@umin.ac.jp

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