費用効果分析(CEA)と医療技術評価(HTA)

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(写真:Images Moneyクリエイティブ・コモンズ表示 2.0 一般

最近ではC型肝炎治療薬のソバルディや抗がん剤のオプシーボなど高価な薬が続々と市場に出てきており、日本の医療費負担が高騰してしまうのではないかということで話題になっています。その中でしばしば費用効果分析(Cost-effectiveness analysis [CEA])医療技術評価(Health technology assessment [HTA])の話が出てきます。医療技術の評価は基本的には、効果があるか、副作用が無いかという点で行われます。これら「効果」の側面に加えて費用の概念を加えることで「効率」を評価する方法がCEAになります。これらの用語の意味、実際にやっていること、そしてその限界も含めて簡潔にご説明したいと思います。

 1.CEAの基本

まずはCEAのコンセプトを理解しましょう。CEAとは、健康に関する効果とそれに要した費用との比を計算することで、コストに見合った効果が得られたのか、それともコストと比べると効果が小さすぎるのかなどを評価します。効果に関しては、しばしば、生存年数と生活の質(Quality of life [QOL])の両方を考慮した質調整生存年数(Quality adjusted life year [QALY])と呼ばれる指標を用います。ちなみにQALYは「クエリ」と読みます。

QALYは生存年数とQOLスコアで重みづけしたものです。QOLスコアは「0=死亡、1=完全な健康」として病気や障害がある状態は0と1の間の値で表されます。完全な健康状態で生存する1年間の価値が1 QALYで、完全な健康状態で生存する2年間は2 QALYです。例えば病気でQOLが0.7と言う状態だったとしたら、その状態で生存する1年間は0.7 QALYであり、その状態で生存する2年間は1.4 QALYになります(下図参照)。

図3

(出典:福田 敬氏 「医療技術の費用対効果の評価と活用」

2.CEAの分類とその周辺領域

CEAの分類と周辺領域には、以下のようなものがあります。

(1)費用最小化分析(Cost-minimization analysis):2つの医療技術の効果が同じであると分かっている状態で、費用が最も少ない方を選ぶ方法です。

(2)費用効果分析(Cost-effectiveness analysis):生存年数の延長などの効果の指標を決めて、それとそれにかかる費用との比を評価する方法です。

(3)費用効用分析(Cost-utility analysis):効果の指標として、QALY(詳しくは上記参照)を用いる方法です。

(4)費用便益分析(Cost-benefit analysis):効果を金銭換算することで、(効果 vs. 費用ではなく)金銭と金銭の比を計算する方法です。

図2

※上述のように効果指標としてQALYを用いる分析方法を費用効用分析と呼ぶこともあります。

(出典:福田 敬氏 「医療技術の費用対効果の評価と活用」

狭義にはCEAは上記の(2)のことを指しますが、「医療経済評価研究における分析手法に関するガイドライン」では(1)~(3)をまとめて広義のCEAとしています。現場でもしばしばこの広義のCEAが使われており、このブログでも理の無い限りはCEAとは広義のCEAと意味します。

3.決断科学

CEAは医療経済学の一部分として教えられることもありますが、一方で独立した学問として教えられる場合もあります。その場合、決断科学(Decision science)という学問領域の範疇で研究・教育されており、そのような研究をする学者を決断科学者(Decision scientist)と呼ぶことがあります。ハーバード公衆衛生大学院においては、決断科学センター(Center for Health Decision Science)で研究、教育が行われています。ちなみにCEAを医療の世界に紹介したと言われているミルトン・ワインシュタイン教授もこのセンターに所属しています。

4.CEA vs. HTA?

実際にはCEAとHTAはほぼ同義で使われており、個人的にはそれでも特に大きな問題は無いと思っています。ただし正確にはHTAはCEAより幅広い分野を意味しています。HTAにはCEAのように経済性を評価するものだけでなく、経済性の評価を伴わない医療技術の評価も含みます。

HTAの定義

HTAとは、医療技術の利用に関する医学的、社会的、経済的・倫理的な問題についての情報を、系統立てて透明性を維持しながら、偏見なくまとめていく学際的なプロセスのことである。その目的は、患者中心の安全で効率的な医療政策を策定するために必要な情報を提供し、最良の価値を達成しようとするものである。 

(出典:EUnetHTA

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