オバマケアによってアメリカの低所得者の血圧・血糖値が改善していたことが明らかに

米国総合内科学会の学会誌であるJournal of General Internal Medicine (JGIM)に、Cedars-Sinai Medical Centerの五反田紘志先生との共同研究の結果が掲載されました。この論文は、オバマケアにより、低所得者向けの公的医療保険であるメディケイドの対象者が拡大されたことで、低所得者層の健康状態がどのように変化したのか検証したものです。オバマケアのメディケイドの対象者拡大によって、医療費の自己負担プライマリケア・救急外来の利用がどのように変わったかに関しては以前の記事をご参照下さい。

過去の研究で、2014年のオバマケア下のメディケイドの対象者拡大によって、低所得者層でメディケイド保持者が増え、無保険者が減った、ということは検証されていました。そして、健康度の自己評価(self-reported health)や一部の疾患に関連するアウトカム(透析患者の死亡率など)も改善していることが報告されてきました。しかしながら、データを入手することが難しいこともあり、より客観的な健康指標である、血圧や血液検査の結果がどのように変化したのかに関する研究はありませんでした。

そこで、私たちは2005年から2016年のNational Health and Nutrition Examination Survey(NHANES)と呼ばれる全国調査のデータを用い、メディケイドの拡大によって、低所得者層の実際に測定された血圧・血糖値・コレステロール値が全米レベルでどのように変化したかを検証しました(NHANESは重みづけをすることでアメリカ国民の代表性のある推定値を計算することができます)。約9000人の19歳から64歳の低所得者(緩和されたメディケイド取得基準を満たす人々)のデータを、メディケイド取得基準緩和を導入した州に住む人たち(介入群)、導入しなかった州に住む人たち(対照群)に分け、差分の差分析を用いて解析しました(解析手法の詳細は以前の記事をご参照ください)。

その結果、メディケイドが拡大されたことで、アメリカ国民の収縮期血圧(3.03 mmHgの低下、95%信頼区間:-5.33~-0.73 mmHg)と過去1~2か月の血糖値の平均値を表すヘモグロビンA1c値(-0.14の低下、95%信頼区間:-0.24~-0.03)が統計的に有意に低下していたことが分かりました。一方で、拡張期血圧およびコレステロール値に関しては統計的に有意な変化は認めませんでした

メディケイド拡大の最終的な目的は、低所得者層に安価な医療保険を提供して、低所得者層の健康状態を改善することでしたが、今回の我々の研究結果からは、メディケイドを拡大した州では、その目的がある程度達成されていたと考えられます。メディケイド取得基準緩和を含むオバマケアが合憲かどうかという裁判は未だに最高裁判所で争われており、その最終判断が注目されます。

原著論文(JGIM): https://link.springer.com/article/10.1007/s11606-020-06417-6

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